[執筆途中]ピストンエンジン:オットー(ガソリン)とディーゼル -平均化モデルでも見えてくる違い-

*執筆途中だが公開ポリシーに則り公開。

 ディーゼルエンジンの平均化モデルを造ったことを受け,オットー機関とディーゼル機関の比較を行ってみた記事第1弾.

記事を通して言いたいこと(結論)

 例によって、冒頭で述べておく。

  • 以前作成したガソリンエンジン〇360を同出力のままディーゼル版に換えたものを作成し,必要parameterや性能特性を比較した.平均化モデルなので熱サイクルの違いしか考慮できないのだが,下記の違いが観察された.
    1. 熱効率が高く,Specific Fuel Consumptionが大幅に小さい.(圧縮比の設定に依る所が大きいが,それぞれに現実的な値を設定)
    2. 比出力が小さく,同出力を得るには排気量の拡大を要する.(後述するが,これは当量比の調整に依る所も大きい)

モデル化対象(とその周辺について)

シミュレーションモデル

    Diagram

     

    1. オットー型(〇360巡航出力合わせこみモデル)

    2. ●シミュレーションモデル情報

    3. ディーゼル型(〇360の同出力ディーゼル版)

    4. ●シミュレーションモデル情報

シミュレーション実行

 今回は,inputを変化させて応答を観るシミュレーションは実施しない.固定値のみで計算を実施し,各エンジンの性能諸元値を比較する.従って,Outputに時系列グラフは登場しない.

    parameter設定の方針・手順

    1. オットー型
    2.  〇360モデル作成記事で既に合わせこみを実施しているので大部分を省略する.尚,前回合わせこみparameterとして軸伝達効率を振った(冷却損失や摩擦損失等,計算結果が実物と合わない要因は多数有るのだが,軸伝達効率値1つに押し付けて,計算結果を合わせに行った)が,今回はその結果を受けて,固定値63%を与える.

       燃料割合を直接入力ではなく,簡易燃料供給ラインモデルに置き換えた事により,fuel mixture制御バルブのノミナル径を追加で設定した.燃料割合が約0.056となるように手動iteration.

    3. ディーゼル型
    4.  自由度を持つ設計変数が多数有るので,手順を決めて1つ1つ順々に決定してゆく.

      1. クランクシャフト機械回転数 = 2400 [rpm]
      2.  比較対象の〇360を機械回転数を固定(プロペラ調速機により,回転数一定で運用されるエンジンであるため)となるよう作成しているのに合わせ,機械回転数固定かつ値も同じ2400 [rpm] にする.
         本来は燃焼過程の特徴から,オットー機関は高速運転向き,ディーゼル機関は低速運転向きと言う特性が有るのだが,今回は平均化モデルを用いており,機械回転数が熱サイクルに影響を与えることは無いので,解りやすさのために同機械回転数にする.
         ↓
      3. 圧縮比
      4.  出力と熱効率の両方に影響してきてしまうので,後から設定するとややこしい.真っ先に現実的な範囲で値を決め打ちにしてしまう.
         ↓
      5. 吸気経路径⇒インテイクマニフォールド圧力
      6.  ディーゼルエンジンは基本的に吸気経路にスロットルバルブが無い(燃料噴射量で出力を制御する).インテイクマニフォールド圧力は吸気経路の全圧損失で決まるが,合わせるべき値が無い.なので,極力全圧損失を生じず,かつオットー型のスロットルバルブ径と比べて非現実的ではないような径を与えておく.
         ↓
      7. 燃料ライン開始部圧力≒燃料ポンプ吐出圧力
      8.  別モデルでディーゼルサイクル/エンジンを動作させていた経験により,圧縮後圧力がどの程度か知り得ている.それに基づいて,絶対に燃料がシリンダに流れる多少過剰気味の値(外気圧力に定数を掛けたものを供給圧とする.なので設定する値はその定数)を与える.
         ↓
      9. 燃料スロットルバルブのスロート径⇒燃焼過程の当量比
      10.  燃料流量をコントロールするバルブの絞りで燃料流量が決まり,燃焼当量比が決まる.以前こちらのHPを参照した際に,ディーゼルエンジンの燃焼では,当量比が2のとき燃焼効率が最大(1.0)であり,そこから当量比が小さくなる(燃料richになる)につれて燃焼効率が下降の一途を辿るという挙動を目にした.
         これを受け,巡航のスロットル開度75%において,当量比が2(もしくはそれより若干大きい)値となるようにバルブのスロート径を調整する.
         ↓
      11. 排気量
      12.  最後に軸出力が〇360合わせこみモデルとほぼ等しくなるように,シリンダ容積の値を調整する.
         *尚,この時,排気量を変えるとシリンダ内の燃料濃度が変わって,止むを得ず当量比も引き摺られて変化してしまうので,燃焼当量比が約2となるように合わせて調整する.

    Parameters

     自由度を持ち,合わせこみを行いながら決めるものに絞って取り扱う.

    1. 圧縮比 = 18.0
    2.  決め打ちで現実的な値を与えただけだが,ここにリストアップしておく.Wikipedia(英語記事)に,多くは15 – 23に分布していると有ったのを参考に,中央辺りの18に定めた.

    3. 吸気経路径 = 3.5*2.54*0.01 [m] (3.5 [in])
    4. 燃料ライン供給部圧力: gain = 60 (常に外気圧の60倍に昇圧)
    5. 燃料スロットルバルブのスロート径 = 0.000753 (0.753 [mm])
    6. 排気量(4気筒合計) = 1.48*5916*10^(-6) [m3] (〇360の1.48倍)

    Variables

     軸出力はほぼ同じに合わせているので当然省略.

    1. Power Specific Fuel Consumption(燃料流量/出力)
      • オットー: 5.39e-5 [kg/(s*W)]
      • ディーゼル: 5.31e-5 [kg/(s*W)]

    2. 比出力(出力/吸気質量流量)
      • オットー: 1108 [(W*kg)/s]
      • ディーゼル: 638 [(W*kg)/s]

    3. サイクル熱効率
      • オットー: 0.4964 [nond]
      • ディーゼル: 0.5568 [nond]

    4. 圧縮行程後圧力(状態2圧力)
      • オットー: 1667 [kPa]
      • ディーゼル: 5436 [kPa]

    5. 圧縮行程後温度(状態2温度)
      • オットー: 663 [K]
      • ディーゼル: 867 [K]

    6. 燃焼行程後圧力(状態3圧力)
      • オットー: 8188 [kPa]
      • ディーゼル: 5436 [kPa]

    7. 燃焼行程後温度(状態3温度)
      • オットー: 3256 [K]
      • ディーゼル: 2031 [K]

    8. 膨張行程後圧力(状態4圧力)
      • オットー: 516 [kPa]
      • ディーゼル: 374 [kPa]

    9. 膨張行程後温度(状態4温度)
      • オットー: 1743 [K]
      • ディーゼル: 1075 [K]

    10. 燃焼過程の比投入熱量(Qin/m)
      • オットー: 2442 [kJ/kg]
      • ディーゼル: 1395 [kJ/kg]

    11. 膨張過程の比仕事(Wout/m)
      • オットー: 1493 [kJ/kg]
      • ディーゼル: 1219 [kJ/kg]

    12. Pressure-Volume図

    13. Pressure-SpecificVolume図

後書き・まとめ

 以前作成したガソリンエンジン〇360を同出力のままディーゼル版に換えたものを作成し,必要parameterや性能特性を比較した.熱サイクルの違いしか考慮できない平均化モデルによる比較だが,下記の違いが観察された.

  1. 熱効率が高く,Specific Fuel Consumptionが大幅に小さい.(圧縮比の設定に依る所が大きいが,それぞれに現実的な値を設定)
  2. 比出力が小さく,同出力を得るには排気量の拡大を要する.(後述するが,これは当量比の調整に依る所も大きい)

以上

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