大型宇宙機の軌道遷移 ~コロニー落とし~ -オープンCAE学会シンポジウム2025講演会発表テーマ(3)-

著(author): zeta_plusplus

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OpenCAE学会シンポジウム2025講演資料

1. Objective / Problem statement

l 核パルスエンジンのCorrelationモデルと軌道力学モデルを用いて、大型宇宙機の大規模軌道遷移シミュレーションを実施する。

l 具体的には某SF作品で幾度となく描かれている、宇宙機軌道遷移の極地、「スペースコロニー(アイランド)落とし」を対象とする。

* 1: 連〇とかジオ〇とか陣営云々の話題には一切触れない。将来どちらからアイランド落としの見積もり計算を依頼されても仕事を請けられるように(どっちも実施している)、シミュレーションのノウハウを積んでおこう。

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Figure 1

https://tvtropes.org/pmwiki/pmwiki.php/Main/ColonyDrop

1.1. 結論

  • スペースアイランドの地球へ向けた減速に必要な高速核分裂デバイスの数は260発と見積もられた。
  • これはアイランドの大きさ・質量を考えると少な過ぎると考えられる。
  • 核分裂の発生圧力は参考論文のものとオーダーが合っていた事から、爆圧を推力に変換するエンジン(受圧板)部分のモデル化に疑義が有る。

2. モデル化対象

2.1. コロニー(アイランド)落としとは

  • ラグランジュ点にあり、月と共に地球の周りを周回しているスペースアイランドの軌道を変え、地球に落とす、というアクティビティ。
  • 人が万単位住み、中に街があるような超巨大質量の宇宙機を月同期軌道から地球表面まで降下させるという非常に大きな軌道遷移。

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Figure 2

Which Side Are You On? | DyarStraights

2.2. ホーマン遷移軌道

  • 円軌道またはそれに近い軌道間の移動で推進剤経済性が最も高い遷移。
  • Figure 3中黄色線の楕円軌道部分遷移部分。
  • Figure 3とは逆の減速・高度下げを実施する。

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Figure 3

Hohmann transfer orbit - Wikipedia

2.3. 三体問題

  • 3つの質量体に互いが重力(万有引力)が働きあう。
  • 解析解・一般解が存在せず、予測には数値計算が必要。
  • アポロ宇宙船の、スイングバイによる8の字軌道が有名(な筈)。

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Figure 4

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Figure 5

3. シミュレーションモデル

3.1. 万有引力コンポーネント

  • 2質点間に働く万有引力を計算する。
  • Modelica Multibody libraryのコンポーネントインターフェイス「flame」を用いており、Multibody libraryと完全互換。

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Figure 6

3.2. 軌道力学用質点体コンポーネント

  • 軌道シミュレーションに用いる物体は全て質点であり、multibody library中の「body」をそのまま用いれば良いが、モデルを組む際の解り易さと、使い勝手のために宇宙機一般および代表天体をコンポーネント化した。

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Figure 7

3.3. コロニー落としシミュレーションモデル

Figure 8に示すシナリオのシミュレーションを実施する。

  • 初期状態にて、スペースコロニーは地球 – 月系のラグランジュ点に位置して月と同期した軌道を回る。
  • 速度ベクトルに正対する向きに短時間・高推力の減速を実施。
  • 核パルスによる減速推力を等間隔で一定時間掛ける。

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Figure 8

3.3.1. diagram

画像9

Figure 9

3.3.2. Parameters

Table 1

Parameter

単位

Value

スペースアイランド本体の質量

[kg]

1.E13

スペースアイランドの初期位置, 地球中心からの距離

[m]

362600E3

スペースアイランドの初期位置, x-y平面上の位相

[deg]

0

スペースアイランドの初期速度

[m/s]

1076

スペースアイランドに印加するパルス推力

[N]

1.945E21

地球の質量

[kg/s]

5.972E24

月の質量

[kg]

7.346E22

月の初期位置, 地球中心からの距離

[m]

362600E3

月の初期位置, x-y平面上の位相

[deg]

60

月の初期速度

[m/s]

1076

4. 計算実行結果

(1) 地球中心からの距離 – 時刻

  • 減速開始後、約390 [kilo second] (4.54日)後に地表に到達する。
  • 地表到達までの猶予は比較的長い。再加速させるなど対抗手段を講ずる時間は有る。

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Figure 10

(2) y座標 – x座標

  • アスペクト比の非常に大きな(非常に横長の)楕円軌道で降下するのを確認できる。

画像11

Figure 11

(3) 核パルスエンジン諸元

  • エンジンのパルス回数の少なさが顕著。
    • この結果の妥当性には疑義有り。
    • 核分裂反応による圧力発生は参照した論文から大きく逸脱していない。
    • このことから、受圧・推力生成のモデルに改修余地有りと考えられる。

Table 2

Parameter

単位

Value

受圧板半径

[m]

200

圧力パルスの大きさ

[Pa]

3.3E16

圧力パルス幅

[s]

1.775E-8

パルスインターバル

[s]

10

パルス回数

[-]

260

5. 課題・Next steps

  • 必要パルス回数が少なすぎる事の考察。
  • 推力発生計算の妥当性再確認とモデルの改修。

[End of article]

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