*執筆途中だが公開ポリシーに則り公開。
記事を通して言いたいこと(結論)
例によって、冒頭で述べておく。
- 高温の輻射熱源から,何らかの物体を保護したい場合に間に遮蔽物を設置して入熱を抑える事が有る.殆どの場合,遮熱材の設置は入熱を抑え保護対象物の表面温度上昇を抑えるのに有効だが,遮熱材の伝熱面積と形態次第では逆効果となる設計があり得る.本記事では非常にシンプルな1D伝熱解析モデルを通じてそのことを示す.
モデル化対象(とその周辺について)
下図の用に何らかの物体が,高温物体からの輻射に晒されている状況を想定する.この輻射による入熱を抑え,保護対象物の表面温度を下げる事を考えたい.
先に大きな過程を述べておくが,外気との熱伝達による熱移動は無いものとして考える.地球上では想定し難い状況では有るが,今回,輻射と遮熱材設計にフォーカスしたいので排除・単純化する.
誰もが確実に思い浮かぶであろう対策が,間に遮蔽物を設置して輻射を遮る事だろう.仮に遮熱材の熱伝導は非常に高く,表裏に温度差は症いないとしても,熱抵抗を直列繋ぎに増しているので,受熱量・保護対象物表面温度を下げられる事が期待出来る.
しかしながら,遮熱材の大きさ・形状によっては冒頭の結論で述べた通り,遮熱効果が得られるどころか,逆に受熱を促進し,保護対象物表面温度を高めてしまう事も有る.それをシミュレーションで観てゆく.
シミュレーションモデル
- 保護対象物の受熱面積: 0.1×0.1 [m2]
- 保護対象物の表皮厚さ: 10 *1e-3 [m]
- 保護対象物の表皮熱伝導率: 0.01 [w/(m*K)]
- 遮熱材(板)の表面積: 1 [m2]
- 遮熱材(板)厚さ: 1e-3 [m]
- 遮熱材熱伝導率: 100 [w/(m*K)]
- モデルのフルパス: SystemModels.VirtualExperiments.RadHeatShield_001
- githubのライブラリページリンク
Diagram
下図の通り,遮熱材有無で2通りの熱経路を用意.
境界条件は,解りやすさのため,高温・低温共に温度で与えるものとする.輻射熱からの保護対象物は内部を一定温度に保っていて外壁を持つ造りとする.そして,その外壁の表面温度と受熱量を観てゆく.身近に例えると,恒温動物である人体の内側が低温側境界条件で,外壁が皮膚脂肪だ.観察対象の表面温度は皮膚表面の温度にあたる.
必要な諸々値は,Modelica.Blocks.Interaction.Show.RealValueを使ってシミュレーションモデルのdiagram上に可視化する.各所の温度,伝熱量,輻射の熱透過度G(形態係数x伝熱面積x放射度)が対象.
尚,この表示は,OpenModelicaの記事執筆時点の最新正式リリース版であるver1.18ではまだ使えない(コンポーネントは有るがOpenModelica上で機能しない).nightly buildのver1.19で試験実装されており,今回筆者はそれを用いている.次回リリースで正式実装となることを期待しよう.
値を固定するparameter
●シミュレーションモデル情報
シミュレーション実行
nominalのparameterを決め,それを中心に輻射の熱透過度,正確には形態係数の値を変える.parameter変えの対象とする輻射伝熱経路は2つで,熱源から遮熱材と遮熱材から保護対象物の外壁表面だ.
case 00: nominal case
Study by changing parameters
遮熱材が受熱を促進するとはどういう事なのか
このことは逆に,太陽光の輻射熱を集めたい場合に利用できる.
後書き・まとめ
毎度通り,ほぼ冒頭の結論の繰り返し.
- 高温の輻射熱源から,何らかの物体を保護したい場合に間に遮蔽物を設置して入熱を抑える事が有る.殆どの場合,遮熱材の設置は入熱を抑え保護対象物の表面温度上昇を抑えるのに有効だが,遮熱材の伝熱面積と形態次第では逆効果となる設計があり得る.非常にシンプルな1D伝熱解析モデルを通じてそのことを示した.
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