*執筆途中だが公開ポリシーに則り公開。
2022/03/12
記事を通して言いたいこと(結論)
例によって、冒頭で述べておく。
- 熱伝達が発生する環境下において,輻射を遮るシールドは,熱抵抗として遮熱すると言うよりも,輻射入熱を一度受け止め,保護対象とは異なる所に熱を流す道具として働く.最も身近なこの働きをする機器が日傘である.簡略化した1D伝熱計算でこれをシミュレートする(シミュレーションに出てくる各値は多少現実味を持たせては居るが仮想のもの.現象が極端に現れて解りやすくするために非現実的な値に設定しているものもある.).
モデル化対象(とその周辺について)
シミュレーションモデル
- 大気への熱伝達無し,遮熱シールド無し
- 大気への熱伝達無し,遮熱シールド有り
- 大気への熱伝達有り,遮熱シールド無し
- 大気への熱伝達有り,遮熱シールド有り
- 受熱物体表面面積: π/4*(0.3)^2 [m2]
- 遮熱シールド(日傘)表面積: π/4*(1.8)^2 [m2]
- 受熱物体表面 – 遮熱シールド 間距離: 0.25 [m]
- 受熱物体表面輻射率: 0.2 [nond]
- 遮熱シールド熱源側表面輻射率: 0.4 [nond]
- 熱源 – 遮熱シールド 形態係数: 0.1 [nond]
- 熱源 – 受熱物体表面 形態係数: 0.1 [nond] (遮熱シールド無しの熱回路のみ)
- 大気熱伝達率: 5 [W/(m2*K] (総ての熱伝達面.”熱伝達が弱くても”を示すため小さい値を設定する.)
- モデルのフルパス: SystemModels.VirtualExperiments.ParasolEffect_001
- githubのライブラリページリンク
概念図
輻射形態係数
今回,遮熱シールド – 受熱物体表面 部分のの形態係数を計算する.並行な円板間の輻射とみなす.これにより,遮熱シールドと受熱物体の大きさを変えた場合の伝熱面積と形態係数変化による熱透過度変化をモデル化する.
使う式は下記;
なお,高温熱源 – 遮熱シールド 側の輻射は形態係数のモデル化を省略する.太陽光輻射のような,形態係数依存度が小さい強烈な輻射入熱を想定する.(専門書を開くと,太陽光輻射は熱流束を一定値としてしまう場合もあるが,受熱側の表面温度には依る計算としたいので流石にそこまでの省略は避けた.)
Diagram
下記4つの熱回路の解析を実施し,比較する.
●代表parameter(固定値input)
●シミュレーションモデル情報
シミュレーション実行
[左2つの回路比較] 熱伝達による大気への放熱が無い場合,遮熱シールドが有る方が,受熱物体表面温度は大幅に高くなる.この記事で述べたように,遮熱シールドがその大きさ故に集光板として機能している為.
[右2つの回路比較] 熱伝達による放熱が生じる場合,遮熱シールドが有る方の受熱物体表面温度の方が低い.受熱物体内側への伝導要素の熱流量を観ると,伝熱の方向逆転まで生じる(回路全体図を再確認して欲しいが,受熱物体側も物体内側の温度を固定して境界条件を与えている.恒温動物の体内温度一定を模擬したもの.).遮熱シールド無しの場合,受熱物体はその表面から熱を受け取るが,遮熱シールドが有ると受熱物体自体も大気へ熱を放出する所まで表面温度が下がっている.
- 各部温度,コンダクタンス
- 熱流量のイメージ
- 熱抵抗のイメージ
- 伝達
- 輻射
熱透過率:伝達と輻射
{}の中が熱透過率(heat conductance)
観ての通り,熱透過率に相当する項を纏めるように変形すると,輻射は伝熱点(面)の温度が入ってくる.それも3乗で効いてくる.高温側・低温側どちらかでも温度が多少下がると熱透過率は一気に低下する(熱抵抗が上昇する).遮熱シールドで輻射熱を一度受け止め,伝達で放熱する経路が存在すると絶大な遮熱効果が得られるのはこのため.
伝達の熱伝達率hも温度が影響はするが,流体の流速の効きの方が圧倒的に顕著で,輻射の温度の影響には比べ物にならない(なお,本記事のモデルでは熱伝達率は固定値).
後書き・まとめ
毎度通り,ほぼ冒頭の結論の繰り返し.
- 熱伝達が発生する環境下において,輻射を遮るシールドは,熱抵抗として遮熱すると言うよりも,輻射入熱を一度受け止め,保護対象とは異なる所に熱を流す道具として働く.最も身近なこの働きをする機器が日傘である.簡略化した1D伝熱計算でこれをシミュレートした(計算に出てくる値は必ずしもリアリティを追及したものではないが).
以上
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