3次元翼(簡易矩形翼モデル)空力計算コンポーネント

 飛行挙動計算向けライブラリ、Aircraft Dynamics Libraryの根幹を成すことになるコンポーネントの1つ。ページ名が示す通り、3次元翼の生む力を計算するコンポーネントである。機体の性能推定、質点飛行挙動シミュレーション、剛体飛行挙動シミュレーション、どれを行うにしても「揚力」「抗力」を算出するコンポーネントがなければ始まらない。

wingSimple_08

 本コンポーネントは、parametersとして与えた2次元翼型の特性値(ex. 揚力係数曲線の傾きetc)を、翼の幾何形状(ex.翼面積、アスペクト比etc)を用いて3次元翼の特性値に補正する。そして、connectorsを介して与えられる飛行条件から「揚力」と「抗力」を計算する。下記に代表的なInput/Outputを挙げる。

Parameters:

  • 翼面積
  • アスペクト比
  • 2次元翼型特性

Input variables:

  • 外気条件(圧力、気温)
  • 飛行速度/飛行マッハ数
  • 迎え角

Output variables:

  • 揚力 / 翼のlocal frameから見た上向きの力
  • 抗力 / 翼のlocal frameから見た後ろ向きの力

 内部には、下図に示すように2次元翼特性計算コンポーネントと3次元翼への補正計算のコンポーネントが入れ子で配置している。

wingSimple_07

Output variableのconnectorは、意図して以下4つの力を出力するものを設けた。

  • 揚力
  • local frameから見た上向きの力
  • 抗力
  • local frameから見た上向きの力

 理由は、航空力学で理解しておかねばならないポイントに

「揚力」≠「飛行機(翼)から見て上向きに働く力」

「抗力」≠「飛行機(翼)から見て後ろ向きに働く力」

というものが有り、コンポーネントを使う際に混同/取り違いしないように意識させるためだ。


少しだけ触れておくと、揚力・抗力の定義はそれぞれ次の通り。

「揚力」:翼の速度ベクトル対して垂直に働く力

「抗力」:翼の速度ベクトルと真反対に働く力

 それだと、「揚力」=「飛行機(翼)から見て上向きに働く力」でいいのでは?と思う方が居られるかもしれない。しかし、飛行機・翼が空気の中を翔けるとき、「速度ベクトル(機の進行方向)」=「機/翼の鼻先の向き」とはなっていないのだ。細かい事と言えばそれまでだが、これを無視すると、大きく鼻先を持ち上げた姿勢で水平を維持する飛行をシミュレートできないし、離着陸時に起きる重要な現象(実際、この現象絡みで少なくない数の小型機操縦者が命を落としている)を無視してしまうことになる。詳細は、本記事では解説を省くので、学びたい方は航空力学の解説書を参照頂きたい。

 今回はコンポーネントのIn/Out・機能の紹介までで終了。このコンポーネントを動かしてみてテストするのは次回の記事で。

 本当は、2自由度(2次元・質点)飛行力学シミュレーションのコンポーネントまで作成完了し、妥当な動作を示すところまで確認できているのだが、、記事作成がとことん遅れている。。。。

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