飛行挙動計算向けライブラリ、Aircraft Dynamics Libraryの根幹を成すことになるコンポーネントの1つ。ページ名が示す通り、3次元翼の生む力を計算するコンポーネントである。機体の性能推定、質点飛行挙動シミュレーション、剛体飛行挙動シミュレーション、どれを行うにしても「揚力」「抗力」を算出するコンポーネントがなければ始まらない。
本コンポーネントは、parametersとして与えた2次元翼型の特性値(ex. 揚力係数曲線の傾きetc)を、翼の幾何形状(ex.翼面積、アスペクト比etc)を用いて3次元翼の特性値に補正する。そして、connectorsを介して与えられる飛行条件から「揚力」と「抗力」を計算する。下記に代表的なInput/Outputを挙げる。
Parameters:
- 翼面積
- アスペクト比
- 2次元翼型特性
Input variables:
- 外気条件(圧力、気温)
- 飛行速度/飛行マッハ数
- 迎え角
Output variables:
- 揚力 / 翼のlocal frameから見た上向きの力
- 抗力 / 翼のlocal frameから見た後ろ向きの力
内部には、下図に示すように2次元翼特性計算コンポーネントと3次元翼への補正計算のコンポーネントが入れ子で配置している。
Output variableのconnectorは、意図して以下4つの力を出力するものを設けた。
- 揚力
- local frameから見た上向きの力
- 抗力
- local frameから見た上向きの力
理由は、航空力学で理解しておかねばならないポイントに
「揚力」≠「飛行機(翼)から見て上向きに働く力」
「抗力」≠「飛行機(翼)から見て後ろ向きに働く力」
というものが有り、コンポーネントを使う際に混同/取り違いしないように意識させるためだ。
少しだけ触れておくと、揚力・抗力の定義はそれぞれ次の通り。
「揚力」:翼の速度ベクトル対して垂直に働く力
「抗力」:翼の速度ベクトルと真反対に働く力
それだと、「揚力」=「飛行機(翼)から見て上向きに働く力」でいいのでは?と思う方が居られるかもしれない。しかし、飛行機・翼が空気の中を翔けるとき、「速度ベクトル(機の進行方向)」=「機/翼の鼻先の向き」とはなっていないのだ。細かい事と言えばそれまでだが、これを無視すると、大きく鼻先を持ち上げた姿勢で水平を維持する飛行をシミュレートできないし、離着陸時に起きる重要な現象(実際、この現象絡みで少なくない数の小型機操縦者が命を落としている)を無視してしまうことになる。詳細は、本記事では解説を省くので、学びたい方は航空力学の解説書を参照頂きたい。
今回はコンポーネントのIn/Out・機能の紹介までで終了。このコンポーネントを動かしてみてテストするのは次回の記事で。
本当は、2自由度(2次元・質点)飛行力学シミュレーションのコンポーネントまで作成完了し、妥当な動作を示すところまで確認できているのだが、、記事作成がとことん遅れている。。。。
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