最終更新:2022.06.20
記事を通して言いたいこと(結論)
例によって、冒頭で述べておく。
- Shell-tube parallel flow型熱交換器の離散化モデル(熱伝達率固定,伝導抵抗省略の簡易モデル.)を作成し,熱交換性能をNTU法の理論式で算出したものと比較した.刻み数を多くすると理論式に対する乖離が小さくなると言う想定通りの結果が得られた.
モデル化対象(とその周辺について)
Shell-Tube型熱交換器
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画像元:wikipedia
●Parallel-flow型
今回取り上げるのはこの型のもの.最もシンプル.伝熱工学の書でも恐らく一番最初に出てくる.
画像元:wikipedia
熱交換効率;NTU法
熱交換器のサイズ,性能,使用条件を無次元化を介して関係付けした設計解析手法にNTU法と言うものがある.
詳細な解説は専門書籍に任せるが,熱交換器の大きさ,熱伝達率,各流体の入口状態を決定すると,下記の計算式を用いて,熱交換効率,出口流体状態が算出される.予測の確度は設定する熱伝達率値次第になり高いとは言えないが,大きさと性能のトレードを容易に観られるので,流体システムの中で熱交換器の仕様を考える際にとても有用な手法である.
因みに,NTUとCrからεを求める計算式は,熱交換器の形式によって異なる点に注意されたい.
*熱伝達率を固定値として扱い,各流体の流量が変わった際の伝熱特性変化を加味出来ていない.しかし,熱交換交換効率・交換熱量は小さい方の熱容量(heat capacity flow)に支配される所が非常に大きいため無視して問題無としていると,筆者は解釈している.計算式を観ても,CrとCminのεへの影響は大きいものとなっている.
NTU法を持ち出した理由だが,この理論式によるεと,離散モデルの計算結果から算出したεを比較し,再現度を評価するため.
wikipedia: NTU法 (英語ページ)
シミュレーションモデル
今回,離散化の刻み数を変えてそれぞれ理論式と比較する.離散化の刻み数が,5, 10, 20の3つのモデルを作成する.尚,熱交換器内の計算要素の分割を変えているだけで,3つとも熱交換器の大きさ(合計伝熱面積)は同じになるように設定する.
Diagram
刻み数10のモデルを代表としてモデル構造説明用に取り上げる.
他の刻み数のモデルの図も示しておく.
- 刻み数5のモデル
- 刻み数20のモデル
代表的なparameter設定
シミュレーションモデル情報
- モデルのフルパス(10刻みモデル):FluidSystemComponents.HeatTransfer.Examples.HeatTransferDevices.HX_ShellTube_parallel_discrete010_ex01
- githubのライブラリページリンク
シミュレーション実行
Variables
Inputs
今回は時間に応じて変化させるinput無.
代わって,NTUを変化させるために,代表伝熱面積に係数を掛け,その値を大きくしてゆく.
Outputs
ε-NTU相関と,ε理論値と離散モデル計算結果の相対errorとNTUの相関をグラフで観る.刻み数による違いが判りやすいように,総ての刻み数モデルのグラフを重ねて示す.
- Effectiveness vs. NTU; 理論曲線と離散モデルから描く曲線
- effectivenessの理論値に対する相対error
後書き・まとめ
毎度通り,ほぼ冒頭の結論の繰り返し.
- Shell-tube parallel flow型熱交換器の離散化モデル(熱伝達率固定,伝導抵抗省略の簡易モデル.)を作成し,熱交換性能をNTU法の理論式で算出したものと比較した.刻み数を多くすると理論式に対する乖離が小さくなると言う想定通りの結果が得られた.
- 刻み数は20も有ればモデルの正確度はかなり高く,広いNTUの範囲で理論式との乖離が相対誤差2%未満まで抑えられる.
以上
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