*執筆途中だが公開ポリシーに則り公開。
最終更新:2022.05.28
記事を通して言いたいこと(結論)
例によって、冒頭で述べておく。
- 水蒸気を用いたパワー発生システム(ランキンサイクル)の設計点計算モデルを作成した.妥当な動き・挙動を示している.
モデル化対象(とその周辺について)
蒸気パワー発生システム
ランキンサイクル
●superheatを含み,膨張行程総てが気相のみのランキンサイクル
本記事のモデルで作るのはこの熱サイクル.
●superheatを含まず,膨張行程総てが混相領域のランキンサイクル
シミュレーションモデル
- 蒸気発生器圧力[kPa]: 8,000
- 蒸気発生器出口蒸気温度[degC]: 500 (途中で変化させる)
- 復水器圧力[kPa]: 8.0
- 復水器出口水温度[degC]: 15
- 水質量流量[kgs]: 1 (途中で変化させる)
- 水供給ポンプ断熱効率[-]: 1.0 (等エントロピー)
- 動力タービン断熱効率[-]: 1.0 (等エントロピー)
- モデルのフルパス:PropulsionSystem.Examples.ThermoCycleSystems.DesignPoint.SteamPowerGenerator_ex04
- githubのライブラリページリンク
Diagram
●蒸気発生器部分拡大
●復水器部分拡大
代表的なparameter設定
シミュレーションモデル情報
シミュレーション実行
- T-s線図
- T-s線図(圧縮行程箇所拡大)
- h-s線図
- 一部variable値を表示したsim. diagram; t=400[s]
- ポンプ水質量流量
- 動力タービン出力(発生パワー)
- 熱量移動およびパワー
- 熱効率
- 蒸気発生器圧力[kPa]: 8,000
- 蒸気発生器出口蒸気比エンタルピ[kJ/kg]: 2758.0
- 復水器圧力[kPa]: 8.0
- 復水器出口水比エンタルピ[kJ/kg]: 181.94
- 水質量流量[kg/s]: 104.722
- 動力タービン出力[kW]: 100,868.44
- ポンプ動力[kW]: 844.06111
- 蒸気発生器投入熱量[kW]: 269,770
- 復水器除去熱量[kW]: 169.750
- 熱効率[-]: 0.371
Variables
Inputs
Outputs
熱効率=0.394. 後述する技術書の類似例題が0.371で近い値となっている.熱機関の熱効率でΔ=0.01は
実装レベルで燃料消費や運用コスト等に置換えると非常に大きな差異で全然違う性能の熱機関という評価になる.しかし,本モデルはこの例題に圧力等の条件を参考として似せただけで,物性まで含めて完全に模擬したものではない.熱サイクルの計算として明らかに誤った事は行っていないという確認程度.この比較から,計算結果は妥当な動きと判断出来ると考えられる.
*本機能はOpenModelicaの1.19開発版以降で使える.
参考情報
[技術書の類似例題]
シミュレーションの妥当性確認に,技術書に記載されている類似例題の代表的数値を参照する.
書籍:Fundamentals of engineering thermodynamics, 5th, Moran
Example 8.1, Ch8.2, Analyzing Vapor Power Systems
各種値
当初,水質量流量1 [kg/s] で約1 [MW] の出力と言うのが妥当でなく大きいように感じたのだが,例題と比べてみて妥当なものだと納得し直した.水の質量流量(システムの大きさ)でスケールして考えると概ね似た値となっている.例題のシステムは質量流量が約100倍大きく,出力も約100倍オーダーで大きい.
*一部の値は直接記載された値ではなく,記載値から算出したもの(動力タービン出力等)
*この例題は水温度には一切触れていない.知るには巻末の物性テーブルを参照・補完処理をする必要がある.
後書き・まとめ
毎度通り,ほぼ冒頭の結論の繰り返し.
- 水蒸気を用いたパワー発生システム(ランキンサイクル)の設計点計算モデルを作成した.妥当な動き・挙動を示している.
- 本例題,いずれチュートリアル連載記事の題材に取り上げようと考えている.取り上げるなら”上級”以上のレベルにカテゴライズするつもり.
以上
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